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がんと診断された人の半数以上が、今や5年後に生きている。国立がん研究センターが2025年11月19日に公表した最新データによると、2009~2011年にがんと診断された日本人の5年相対生存率64.1%に達した。これは、10年前の50%台から一気に上昇した数字だ。特に女性の生存率は66.9%、男性は62.0%と、性別差もはっきりと表れている。驚くべきは乳がんの88.7%。8人に7人が5年後も元気に生活している。一方で、肝がんは33.7%、肺がんは35.5%と、依然として厳しい現実が残る。この差は、単なる治療技術の進歩ではなく、早期発見の有無が生死を分けることを示している。

早期発見が命を救う:胃がんと大腸がんの成功事例

胃がんの5年生存率は63.5%、大腸がんは67.2%と、欧米を上回る水準だ。なぜ日本はこれほど高いのか? その鍵は、胃がん検診大腸がん検診の普及にある。韓国と並んで、日本は全国規模で胃の内視鏡検査や大腸内視鏡検査を公的支援で推進してきた。限局型(早期)で発見された胃がんの生存率は92.4%、大腸がんは92.3%。つまり、がんが小さく、転移していない段階で見つかれば、ほぼ治癒できる。これは、検診を受けるかどうかで、生死が大きく変わる典型的なケースだ。

肝がんと肺がん:なぜ治療が難しいのか

一方で、肝がんの生存率は33.7%、肺がんは35.5%と、いまだに3割台にとどまる。理由は明確だ。どちらも症状が現れるまでに時間がかかり、多くの患者がすでに進行した段階で発見されるからだ。特に肝がんは、肝炎ウイルスやアルコール性肝障害が背景にあることが多いが、自覚症状が薄く、検診の受診率が低いため、早期発見が難しい。肺がんも、CT検診の普及は進んでいるが、タバコをやめない高齢者層や、検診を「面倒」と感じる世代が依然として多い。2年目以降の生存率の落ち込みが小さいというデータは、治療が進んでも「再発」が大きな壁であることを意味する。

小児がんは全体的に改善、でも中枢神経系は依然厳しい

小児がんの5年純生存率は82.3%と、成人を上回る。特に網膜芽腫胚細胞性腫瘍は94%以上と、ほぼ治る病気になった。しかし、中枢神経系および頭蓋内・脊髄腫瘍は57.1%と、他の小児がんと大きな差がある。脳や脊髄の腫瘍は、手術や放射線治療のリスクが高く、後遺症との両立が課題だ。子どもたちの命を救う一方で、生活の質(QOL)をどう保つか——これが次の課題になっている。

がんは「誰にでも起こる可能性」:生涯罹患リスクは男性2人に1人

がんは「他人事」ではない。2021年のデータによると、日本人男性生涯罹患リスクは63.3%、女性は50.8%。つまり、男性はほぼ2人に1人ががんと診断される時代だ。2023年には38万2,504人ががんで亡くなり、全死亡の24.3%を占めた。これは、交通事故や心臓病よりも多い。厚生労働省は「第4期がん対策推進基本計画」(2023~2028年度)で、がん検診の受診率を60%以上に引き上げることを目標に掲げた。しかし、現状は40%台。つまり、半分以上の人が検診を受けていない。なぜ? 「時間がない」「怖い」「結果が不安」——そんな声が、命を遠ざけている。

2040年、がん患者は105万人に 生産年齢層にも影

今後、がんの患者数はさらに増える。国立がん研究センターの推計では、2040年にはがん罹患者が105.5万人に達すると予測される。2025年の102.5万人から3%増。特に注目すべきは、生産年齢層(20~64歳)の患者が2040年には21.4万人に上るという見通しだ。働き盛りの人ががんになる。仕事と治療の両立、経済的負担、家族のケア——社会全体で支える仕組みが、今、急務になっている。

検診を受けること、それが最強の予防だ

がんの治療は、昔と比べて劇的に進歩した。だが、それ以上に効果があるのは「検診」だ。胃がんや大腸がんのように、早期に見つかれば9割以上が治る。肝がんや肺がんも、小さな病変を発見できれば生存率は2倍以上に跳ね上がる。問題は、検診を受ける「勇気」だ。検査の結果が「悪かったらどうしよう」——その不安が、命を守るチャンスを奪っている。でも、もし悪くなくても、安心できる。もし悪くても、早ければ、治せる。がんは、もはや「死の宣告」ではない。それは、早期発見という選択肢を、自分自身で選ぶかどうかの問題だ。

Frequently Asked Questions

がんの5年生存率とは何を意味するの?

5年生存率とは、がんと診断された人が5年後に生きている割合を示す指標です。これは「治った」ことを意味するわけではなく、がんによる死亡リスクが大幅に低下したことを示します。特に乳がんや前立腺がんでは、5年後に再発しないケースが多いため、ほぼ治癒と見なされることが多いです。

なぜ肝がんや肺がんの生存率は低いの?

肝がんと肺がんは、初期症状がほとんどなく、気づいたときにはすでに進行しているケースが多いです。特に肝がんは肝炎ウイルスが原因で、検診を受けていない人が多く、肺がんはタバコの影響が強く、早期発見のためのCT検診の普及がまだ十分ではありません。これが生存率の低さの主な原因です。

がん検診を受けるべき年齢は?

胃がん検診は40歳以上、大腸がんは40歳以上、肺がんは50歳以上(特に喫煙歴がある人)が推奨されています。乳がんは40歳以上、子宮がんは20歳以上で定期的に受けるべきです。自治体の無料検診を活用すれば、数千円で受けられます。受診率が低いのは、情報不足や不安が原因です。

がんの生存率は今後も上がるの?

はい、特に免疫療法や遺伝子検査を活用した個別化治療の進展で、肺がんや肝がんの生存率は徐々に上がっています。ただし、それは早期発見とセットでなければ意味がありません。検診を受ける人が増えれば、全体の生存率はさらに上昇する見込みです。

がんと診断されたら、どうすればいい?

まず、がん情報サービス(国立がん研究センター)や地域のがん相談支援センターに相談してください。治療法は複数あり、第二の意見を聞くことも重要です。また、がんは「ひとりで抱え込む病気」ではありません。家族、職場、医療チームと連携し、治療と生活の両立を図ることが、長期的な生存に直結します。

がん検診を受けるのをためらう人の心理とは?

「結果が怖い」「自分は大丈夫」「時間がない」——これらは共通の心理ですが、実際には検診を受けていない人の多くが、結果を恐れるあまり、早期発見のチャンスを逃しています。でも、検診で異常が見つかったとしても、9割以上は「まだ大丈夫」な段階です。怖いのは、検診を受けることではなく、受けていないことです。