朝は500円超高、終わってみれば0.4~0.5%安—何が起きたのか
朝の気配は強烈だった。円安が進み、輸出株に買いが広がって始まるや、指数は一時500円を超える上昇。ところが引けにかけて売りが優勢になり、この日の日経平均は43,459.29円と前日比で0.4~0.5%下落して取引を終えた。見出しだけ見れば「続伸スタート」なのに、着地は“朝高・引け安”。典型的な往って来いの一日だ。
午前は自動車や機械などの輸出関連が相場を引っ張った一方、午後は利益確定が広がり、先物売りが指数を押し下げたとの見方が多い。週内に先物・オプションの清算(SQ)を控えるタイミングでもあり、ヘッジの手当てが相場の振れを増幅した可能性がある。為替が株の追い風になっても、デリバティブの需給や短期筋の回転が強く出ると、上げは長続きしにくい。
もう一つは海外要因だ。米金利やハイテク株先物の動きが日中のセンチメントを揺らした。朝は「円安=買い」で駆け上がり、昼過ぎからは「外部の逆風=売り」に傾く。需給が薄い時間帯には、わずかな売りでも指数がズルッと下に走る。そんな一日だった。
円安は追い風のはず—それでも株が上がらない日がある理由
円安は輸出企業の採算を押し上げる一方で、輸入コストや消費の重さも意識される。小売や外食、電力・ガスなどはコスト高が逆風になりやすい。相場全体で見れば「プラスとマイナスがせめぎ合う」状態で、単純に円安だけで押し上げるほど地合いが強くない日もある。
金利の視点も欠かせない。円安が進む局面は、しばしば米長期金利の上昇とセットになる。その場合、グロース(将来利益を織り込む銘柄)は割引率上昇で逆風を受けやすい。朝は輸出や銀行が買われ、午後は半導体や高PER株に売りが出る—そんな回転が指数の上値を重くする。
バリュエーションとポジションも効く。高値圏での戻りには、短期筋の利食いが待っている。先物主導でギャップアップすると、現物投資家は追いかけづらく、上げのエネルギーが切れやすい。加えて、オプションのガンマ(ヘッジ)の向きが変わると、値動きは一方向に加速する。今日の値動きは、そんな“需給の綱引き”の教科書のようだった。
- 先物主導の買いで朝方は上昇、現物の買いは追随が鈍く失速しやすかった。
- 円安の恩恵が大きい輸出は朝強含み、半導体や高PER株には戻り売りが出やすかった。
- 銀行や保険など金利感応度の高いセクターは相対的に底堅いとの見方が広がった。
- SQ週のヘッジ需要で、午後にかけて売りが厚くなりやすい地合いが意識された。
投資家が次に見るべき材料はシンプルだ。為替の水準と方向、米金利と米株先物のトーン、そして国内では先物・オプションの建玉の傾き。企業決算で示された為替前提(例:想定レート)と実勢のギャップも、セクター間の強弱を左右する。円安という単一のシグナルに頼らず、需給と金利、業績の三点セットで相場を点検したい。
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